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「非通知」連作はこの話が終わりです。
ですが、書きたい場面がまだまだあるので 7 2 9 とか順不同でまだまだ書きます。
では、非通知最終話 「不通」 ドーゾ
非通知が掛かってこない。
毎日遅く、でも必ず掛かってきていたのに。
こっちからかけたことは1度も無かった。
かけようと思ったことも無かった。
けれど、あんまりにも掛かってこないから、かけてみようと思った。
出なかった。でも、待った。機械の声でもいい。なにか、何か聞きたかった。
長い、長いコールのあと画面に映ったのは鮮やかな赤い髪の女。
『ネーナ』
ミハエルの口から何度も訊いた名前が浮かんだ。
ミハエルのいうほど絶世の美女ではなかったけど、ミハエルの妹かと思うと可愛い気がした。
さんざん泣いた後のようなのが分かった。
だから、なんとなく、解った。
「あんた、ミハにぃが毎晩連絡入れてたひと?」
「もう、ミハにぃはいないよ」
「ミハにぃも、ヨハンにぃも、死んじゃったの」
「あたしのせいで、にぃにぃたちは死んじゃったの」
独り言みたいな話し方で、俺には何も答えられなかった。
「助けて」
「あたしを助けてよ。誰でもいいから、お願い」
助けて、が、殺して、に、聞こえて、痛かった。
すごくすごく、痛い気持ちが伝わって、俺の抱えていた不安と共鳴して、痛かった。
「ごめんな」
「俺は『俺』を守るだけで精一杯なんだ」
「俺はミハエルじゃない、あの兄ちゃんでもない」
「だから、」
「あたしに生きる資格なんて無い!」
「にぃにぃはあたしを守って死んだの!」
「あたしがにぃにぃを殺したのよ……殺したと、同じよ!」
「ミハエルは、お前に殺されたなんて思ってない」
「ミハエルも兄ちゃんも、お前のことが大好きだったから」
「殺されたなんて思ってない」
「嘘つき! 信じない!」
「俺からはこれしか言えない」
「うるさい! うるさいのよ!」
「生きてくれよ、ミハエルのためにも!」
通信は切れた。
非通知はもう、掛かってこないだろう。